オープニング4 ――反政府勢力――


シーンプレイヤー:ハインリヒ/タロット:ニューロ(逆)


 円卓会議室は重苦しい空気に包まれていた。空席は一つ――シャルル・バルバトールの座るネオフランス代表の席である。
「やれやれ……次から次へと面倒な……」
 誰かの呟きが洩れ、その力の無さから、彼らの憔悴が見て取れる。
 新欧州連邦ヴィル・ヌーヴは、今まさに崩落の危機に瀕していた。



RL:さて、続けてヴィル・ヌーヴ中枢を映し出そう。ハインリヒとアルヴィラは自動登場。クロノの席にはアルヴィラが座っている。

アルヴィラ:大人しく座って聞いてよう。

ハイン:同じくです。

議員:「ネオフランス行政圏より始まった国民のレジスタンス運動は、徐々にその規模を増している。先ほど入った報告によると、他の行政圏にまでその思想に賛同する者は及んでおるようだ」

ハイン:良かった、ドイツだけじゃなかったんだ。

リーベ:フランスからなんですね。

議員:「事の起こりは、我々政府へ説明を求める声だったようですね。国内で発生したダミークライスト事件。そして北米との関係悪化、これらが連続して起こったことに対する不満が原因です。もはやクーデターと言っても過言ではないでしょう」


ミリシア:RL、なんでさっきから私のことチラチラ見てるんですか(笑)。

RL:いや別に(笑)。これからが楽しみだなーと思って。


議員:「いずれも国を滅ぼしかねぬ大事。さすがに国民にも、これらの根底に何らかの共通点があるのでは、と勘ぐる者が現れても不思議ではあるまい」

ハイン:ああー……。

RL:ハインリヒからは特になし?

ハイン:まあ、聞いてるだけですね。

アルヴィラ:発言するようなこともなかったしな。

RL:それじゃあ、他にもにょろにょろ説明があった後、「各自慎重に対処してもらいたい」との言葉で会議は幕を下ろす。えーと、場面を移そう。帰りのリムジン。アルバートの運転で帰路についてるとこ。アルヴィラも一緒ね。

ハイン:「さて、これからどうするか」

アルバート:「お嬢……いえ、ハイン様。ドイツ圏境付近でもレジスタンスが蜂起したそうです。国境警備隊の中にも寝返る者多数とのこと。まずはこれを治めるのが先決かと思われますが……」

ハイン:「そうだな。何か手はあるか?」

アルバート:「まずは現場を回りましょう。正確な情報を集めた後、行動を起こすのが先決かと思われます。アルヴィラ様にも是非お力添えを」

アルヴィラ:「ええ、もちろんですわ」

RL:現場を見て回るのであれば、フランスかドイツに行くのがいいだろうね。

ハイン:なるほどです。

アルバート:重要なのは《暴露》に相当する神業の切りどころにございます

一同:おい!(爆笑)

ミリシア:何言っちゃってるのこの人(笑)。

リーベ:いやー、なんて優秀な執事だ。

ハイン:「なるほどな。アルバート、それは《買収》でも代用が効くのか?」(一同笑)

アルバート:問題、ありますまい


アルヴィラ:おい、誰かこいつら止めてやれ(笑)。

リーベ:あなたしかいないじゃないですか。(一同笑)


RL:そろそろシーンを切ろうか。ここで舞台裏から、誰かが《神の御言葉》を宣言。

ハイン:ゴスペル!?

RL:対象はヴィル・ヌーヴの国民。このアクト中、エグゼクの特技を使用することができなくなる。拡大解釈してるけど、今回の特殊ギミックのひとつ。

ミリシア:つまり洗脳されて指示には従わないと。

RL:そゆこと。

ハイン:まずいですよ、これは!






オープニング5 ――アベル・ブリッツマン――


シーンプレイヤー:ミリシア/タロット:タタラ(逆)


 懐かしい夢から意識は現実に戻ってくる。
 いつの間に眠りこけていたのか、資料の散乱したデスクの上でミリシア・リコリスは半開きの目をこする。すると、ドア付近に立っていた家政婦ドロイドが、待ちかねていたかのように「おはようございます」と声をかけてきた。
「ミリシア様、お客様が見えてますが……」



RL:さて、ミリシアはある意味、今回の主役とも言える。ノックの音で目を覚ましたようだね。

ミリシア:「どうぞ」と少し不機嫌なトーンで答えます。今日は体調も優れないので。

RL:ドロイドがロックを解除して、客人を迎える。するとガラガラドッカーンと派手な音を立て、一人の青年が部屋の中に転がり込んできた。

ミリシア:(はぁーとため息)

RL:恐らく青年はドアの微妙な段差に躓いたのだろう。そのままダイナミックに本棚に突撃。パラパラと落ちてくる資料の山から、気まずそうに頭を掻きつつへらへらとした笑顔を覗かせた。その顔は、もちろんミリシアなら知っているね。

ミリシア:「……一体何の用、アベル?」

アベル:「やあ、久しぶりだね、ミリィ」

RL:彼の名はアベル・ブリッツマン。君の幼馴染にして、かつて同門として腕を磨きあった青年だ。実に数年ぶりの再会、だというのにまるで昨日別れたばかりのような奇妙な懐かしさを感じる。

ミリシア:アベルに腰掛けるよう促します。「せっかく来てもらって悪いんだけど、今日は気分が悪いの。できれば手短に済ませて欲しいのだけど」コーヒーくらいは入れましょう。

RL:「ありがとう」と一息つくアベル。「変わらないね、ミリィは」

ミリシア:「あなたもね。お互い様でしょ」


リーベ:なるほどー。昔からあんなノック魔みたいなことしてたんですね。

ハイン:ノック魔?

リーベ:アルバートの時ですよ。(一同笑)

ミリシア:あれは私じゃなーい!(爆笑)


RL:さて、アベル君が言います。「ミリィは、今もハインリヒの元で働いているんだね」

ミリシア:呼び捨てなのが気になりますが、「ええ、そうよ」とあっさり返します。

RL:それを聞いて、しばらく思いつめた表情をした後、彼は本題を切り出した。

アベル: 「あのさ……今のヴィル・ヌーヴについて、どう思う」

ミリシア:「どう……って?」

アベル:「正直に言って、戦後の復興は芳しくない。僕らのドイツだって例外じゃあない。かつての発言権はフランスと肩を並べて強大だったはずなのに……今じゃ行政圏の中で、最も立場は悪い」

RL:補足すると、公式の世界観ではネオフランス行政圏がヴィル・ヌーヴの主導権を握ってるのね。でもこのキャンペーンでは独自解釈を入れて、シャルルやジャンの父親、つまり先代の州知事が派閥争いによって排除されたものとしてる。その時のゴタゴタにドイツも巻き込まれてハインリヒも代替わりしたって感じ。

ミリシア:「それは……」言葉を濁らせる。

アベル:「なあ、ミリィ。どうして君はあの人のためにそこまで頑張っていられるんだい?」

ミリシア:「信じているから。あの人なら、この国を変えられるって」

RL:その言葉を聞き、アベルも若干言いよどむ。しかし、小さく首を振り、意を決したように「ハインリヒから離反してくれないか」と続けた。

アベル:「例え彼にそれだけの素質があったとしても、まだ若すぎる。退廃したヴィル・ヌーヴの首脳陣に飼い殺されてる現状を見れば分かるだろう。今こそクーデターを起こして、新しいヴィル・ヌーヴ連邦を作り上げるんだ。僕たちのために」

アルヴィラ:彼?

ハイン:男装してますから。



ミリシア:「……言いたいことはそれだけかしら?」

アベル:「なっ……!」

ミリシア:「私はハイン様を信じてる。それはこれからも変わらない、きっとね」

アベル:「でも、ミリィ……」

ミリシア:「私の答えは変わらないわ。話がそれだけなら、今日はもう帰ってちょうだい」頭を抱えてうな垂れます。取りつく島もない雰囲気で。

RL:了解。アベル君はその様子を見て、「分かったよ」と席を立つ。


「だけどミリィ、考えて欲しい。そんな悠長なことを言ってられるほど、状況は待ってはくれないよ」
 アベルの言葉に、ミリシアは無言の返答を返す。
 ヴィル・ヌーヴが緊迫した状況下にあることなど分かりきっていた。多くの勢力が拮抗し、今もこの国の歴史は大きく動いている。
 誰かが動かねば国は変えられない、それには同意だ。しかし、その渦中にいるハインリヒを裏切るなど、ミリシアには考えたこともないことだった。
 その“誰か”になれるのは、まぎれもなく彼女なのだと信じていたから。
「それじゃ、また」
 退室する彼の背中を見ながら、ミリシアは深く、ため息を吐いた。




RL:アベル君は退場します。これにてオープニングを終了します。

リーベ:ミリシアのオープニングが思ったよりシリアスでしたねえ。

アルヴィラ:むしろおでプリ屈指の真面目オープニングかもしれん。(一同笑)









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