そこは暗く、冷たい場所であった。
長らく人の住んでいない、すえた臭いとほこりっぽさが立ち込める空間。壁と床はむき出しのコンクリートに囲まれ、辺りには合成食料のパックが散らばっている。
眼を凝らすと、複数の男のシルエットが見えたが、皆一様に体を休めているようだった。まるで、これから戦地に赴く兵士のように。
くしゃみをひとつ。
電力の途絶えた極寒のヴィルヌーヴの気温の中、ミリシア・リコリスは夢を見ていた。
RL:そろそろミリシアのキー公開推奨タイム、かな。舞台は、廃棄ドーム内にあるビル。ミリシアは今、気絶したように眠りこけている。
リーベ:寝たら死ぬんじゃないかなあ(笑)。
ミリシア:寝るというより、洗脳された自分が見ている白昼夢というのはどうですか?
RL:なるほど、それは面白いね。いいよ。
ミリシア:では、キーハンドアウトを公開しまーす。
RL:それはキミが子供のころの記憶。アベルと二人。親が忙しく寂しい幼少時代を過ごしたミリシアにとって、彼は唯一気の安らぐ友人だったというわけ。二人は、共通の師匠の元でタタラの知識や技術を学んでいました。師の名はバルトシュタイン。
一同:ほうほう。
ミリシア:「先生、青カビからペニシリンが抽出できましたよ! これで私も一人前ですか?」どんだけ頭がいいんだってのは置いといて、子供のミリィが。(一同笑)
RL:そんな横でバルトは羊を20頭くらいクローン再生してる。(爆笑)
バルト:「ほう、やるじゃないか。アベルも拙いながら人工筋肉の培養に成功したようだな」
ミリシア:「アベルが?」
バルト:「二人はワシ以上にタタラとしての才覚があるのかもしれないな」
リーベ:どんな施設だっていう(笑)。
RL:子供ながらも才能を見初められたんだよ。某コクーンよりアットホームだ。(爆笑)
ミリシア:「私が植物、アベルが神経細胞、先生がクローン。すごい、ちょうど穴を補いあっていけますね!」
バルト:「いやはや、あながちそれも冗談ではないな。それぞれ別の才能に秀でた、何より若きタタラの成長に、先生も脳汁が止まらんよ」(爆笑)
RL:さて、そんな楽しげな空気から場面は変わる。そこには少し成長したミリシア。
ミリシア:では、与えられた部屋の中で、今の研究所のように、部屋一杯のリコリスを培養して育ててるんですよ。
RL:そんなミリシアの元に、アベルとも仲の良かった共通の友人が駆け込んでくる。「ミリィ!」
ミリシア:「どうしたのミゲル!」あ、ミゲルは違う。(爆笑)
RL:「大変だ、アベルが!」
ミリシア:「ア、アベルがどうかしたの?」
RL:そしてフラッシュバックするかのように、めまぐるしく場面は変わる。そこは病院のベッド。息も絶え絶えなアベルが映し出される。
ミリシア:「や……やだよ、アベル。約束したよね……? 二人で、泣いてる人を無くそうって、みんなを幸せにできるようにって……そんな技術を作ろうって……」
RL:しかし、ミリシアの想いも虚しくアベルの心音は止まる。重い心臓病を患っていたアベルにとっても、ミリシアは数少ない心の許せる友人だった。彼は最後に、せいいっぱいの微笑みを、キミに返した。
ミリシア:「ア……アベ、ル?」
RL:そしてコツ、コツ、と後ろから近づく足音。バルトシュタインだ。
バルト:「ミリィ。人はいつか死ぬ」
ミリシア:「バルト先生……何故ですか? 私の力が足りなかったせいですか! 私が薬を開発できなかったから! 私が間に合わなかったから!? アベルは……!」
バルト:「大丈夫……まだ手はあるさ。アベルにも、また会えるよ」
一同:!?
アルヴィラ:バ、バルトさーーん!?(笑)
リーベ:何を言ってるんですか先生!(一同笑)
バルト:「いい子だね、君は。さあ、落ち着いて……」
RL:バルトシュタインは、ミリシアの頭に向け、すうっと手を伸ばしていく。暗転する視界。そして目を覚ますと、そこはビルの中でした。洗脳解けていいよ。
ミリシア:「バルト、先生……」
リーベ:やったー。
アルヴィラ:マインドコントロールされたのか、これは?
ミリシア:じゃあ演出としては、ミリシアは寒すぎるこのビル内に即席の温室を囲っていて、手入れしようとしたバラの棘が刺さります。痛みで正気になるということで。
RL:おー、なるほど。ではそばにアベルもいるということで。
アベル:「大丈夫?」
ミリシア:血の付いた指をなめ、ビクッと。「アベル……? わ、わたし……」
アベル:「もうじき、ハインリヒもここに来るだろう」
ミリシア:言葉にならない様子で狼狽えます。
ハイン:なるほど、そういう展開ですか。
RL:さあ、キーハンドアウトを読み上げてもらおうか。
ミリシア:はい。
ミリシア用キーハンドアウト
夢を見た。それは幼馴染アベルとの懐かしき思い出。キミはかつてアベルとともに学びあい、同門の技術者として成長してきた。しかし、そんな幸せも束の間であった。
アベルは死んだ。心臓病を患っていたのだ。
ある日、落ち込んだキミの元に、師であるバルトシュタインが歩み寄ってきた。
コネ:“超脳”バルトシュタイン(タタラ◎) 推奨スート:理性
ミリシアとアベルの師。もう何年も連絡をとっていないが、疑問に思っていない。(神業の影響)
RL:と、いうわけです。正気になったミリシアはアベルに対してどういう感情を抱くのか。
ミリシア:では行動で示しましょう。アベルの胸に、恐る恐る耳を当てる。「アベル、私……大事なことを忘れてた」
アベル:「何、ミリィ?」
ミリシア:「アベル、私、この間――いい人に会ったのよ」
アベル:「いい人?」
ミリシア:「うん。とても手品が上手だった。あのバラもね、その人がくれたの」
ハイン:ミリシアモテモテだ。
アルヴィラ:姫様はモテませんよ。
リーベ:またまたー。(爆笑)
RL:おい、舞台裏。面白くすんな(笑)。
ミリシア:「ほんの数時間だったけど、なんていうのかな、とても心が安らぐ時間だった」 RL、アベルの心音について知覚したいんですが……。
RL:判定するまでもなく、アベルに心音がないことが分かる。
ミリシア:「アベル。ごめんなさい。あなたと再会するのを望んだのは私だけど……全然うれしくないや」
アベル:「なぜ」
ミリシア:「
だってあなた――死んでるのよ」
アベルは呟く。
「なぜ」
その言葉はミリシアに向けたものではなく、自分への問いかけのように感じられた。
「ナゼ」
繰り返し、彼は苦悶する。
「ナゼ ナゼ ナゼ……」
今までの、柔和で人のいい青年とは思えないような、苦痛に歪んだ表情。
「ナゼ、僕ハココニイル……? ナゼ? 分カラナイ……」
「アベル!」
駆け寄ろうとするミリシア。しかし、彼女はすぐにその動きを止めた。
「一週間か、持った方だな」
聞き覚えのある声が、背後から聞こえたからだ。
RL:ここで〈ヴィジョナリー〉を宣言。判定は自動成功。バルトシュタインが登場するよ。今は使われていない監視カメラからホログラフが映し出される。
ミリシア:「バルト、先生? やっぱりあなたが……? このアベルは、クローン……なんですか?」
アルヴィラ:ただのクローンとは思えないがな。
バルト:「概ね間違ってはいない。が、主だって作用しているのは、君の開発した延命薬だ。ヴィーデルリボンといったか。あれを少し改良させてもらったよ。私だけの技術では、死滅した脳細胞までは活性化させられなかった。今はまだ、継続時間に問題がありそうだがな」
アルヴィラ:うわー、これはきつい。
ミリシア:「先生……ごめんなさい。もう、いいから。もう、やめて……お願い!」首を振りながら涙を浮かべます。
バルト:「君の限界は、こんなものだったかな?」
ミリシア:「先生、アベルが!」
バルト:「はぁ……その様子では、もう使い物にならないな」
RL:アベルは頭を押さえ、苦しんでいる。
ミリシア:「いや! アベル!」
バルト:「ミリシア、君の技術は手に入れた。それに、そのモチベーションではこれ以上の成長も見込めそうにない。残念だが、用済みだ」
RL:バルトがホロヴィジョンの向こうで手を挙げると、廃棄ドームの中にいるレジスタンスたちが一斉に銃口を向ける。
ミリシア:アベルにすがりつきながら「あなたたちは……あなたたちは、なんなの。何が目的なの!?」
バルト:「イワミカヅチ。ミカヅチ部隊、失われた第9班。――ヴィル・ヌーヴを、もらいにきた」
舞台裏
RL:ほんとはこの展開までサクサク行くつもりだったんだよね。
ハイン:最初がホットすぎましたね。ようやく空気がシリアスです。
アルヴィラ:いつものおでプリかと思ったらそんなことなかったぜ(笑)。
RL:さあ、みんな。シリアスと3回唱えて次のシーンに移ろうか。
一同:うーい。
アルバート:「ハイン様、ご決断を」
ハイン:「しかしやつらの目的もよく分からん。大した要求もなく我々を呼び出すとはな。いかんせん、動きづらい」
アルヴィラ:「向こう側に人質がいる以上、うかつな行動はとれませんわ。まずは彼女を助け出すことを最優先に動きましょう」
ハイン:「確かに、ミリシアは大事な友人、なのだが」言いづらそうに、「……レジスタンスの根城が分かっている以上、そこに奇襲をかけるのが先決だと私は考える」
アルヴィラ:「奇襲ですって? あちらの圧力かは存じませんが、今は貴方の力が存分に振るうことができないことくらい、私にも分かります。戦力がない以上、どうするおつもりで」
ハイン:「場所まで教えてくれたわけだ。ならば――そこに爆撃すれば済む話」
RL:ミリシアごと?(笑)
アルヴィラ:ガタっと立ち上がる。「しかし! それでは彼女が、いや――国民が犠牲になるのですよ!?」
RL:お、それには斬佐も一言あるぞ。
斬佐:「問題なかろう。戦とはそういうものだ。常に誰かが死に、勝者のみが生き残る。大義のために必要な犠牲もある」
ハイン:じゃあ私も斬佐と同じことを言ったということでいいですか。
RL:いいね。脳内と現実の両面でシンクロしたってことで。
リーベ:四面楚歌アルヴィラ。(一同笑)
アルヴィラ:「それでも、無理やり彼らを鎮圧したとして、それで本当に革命という波を止められますか! 国民を捨てるということは、国を捨てる事と同義です。そんなことをしても、なんの解決にもならない!」
ハイン:「君は、このまま国民同士で戦争を続け、疲弊し合えと?」
アルヴィラ:「それは……」言葉に詰まるわな。
ハイン:「確かに、君の言うことは理想だろう。しかし現に被害は増え続けている。ならば、今クーデターを起こしている一部を犠牲にし、今我々を信じてくれている国民を助けるべきではないのかね」
ミリシア:あれ、レジスタンスは扇動された国民だけなんですか? それともその中核に岩雷部隊がいる?
RL:そうね。数は少ないけど、N◎VA軍も市民に紛れ込んで情報操作してるよ。
アルヴィラ:岩雷部隊には俺たちたどり着いてないよな?
RL:うん。今んとこミリシアのみ。
ハイン:ぶっちゃけると、国民を助ける情報は、オープニングでアルバートにもらってるんですけどね。
アルヴィラ:ああ、あれか!(一同笑)
ハイン:だけどハイン的にはもう少し押してもらいたい……。
RL:ふむ、確かに落としどころが難しいシーンだね。こうなったら、アルヴィラがハインリヒに《神の御言葉》撃つってのが手っ取り早いよ。早いよ(笑)。
アルヴィラ:同じ穴のムジナになってどうする!(一同笑)
ハイン:クライマックス前にそんなことしたらアルバートも止めに入りますよ(笑)。
リーベ:お止めください〜! ここで神業を切らないでください〜!(爆笑)
アルヴィラ:よし決めた。「確かに、このまま放っておけば、更に犠牲は増えるかもしれない。……
けどなー、そんな奴らでも、今まであんたらを信じてここまで付いてきてくれたんだ! それを一度や二度裏切ったぐらいでリセットするような真似、許せるわけねーだろ、ボケー!!!」 と言って、ペルソナをレッガーに変えよう。
一同:おお〜!
アルヴィラ:「向こうは猶予を与えてきたんだろ。それならどう動くにせよ、まだ時間はあるはずだ。それをよく考えず効率だけで判断するなんて、国のトップが聞いて呆れるぜ!」
リーベ:ギャングスター解放きたー。
ハイン:やべー、私もペルソナ変えようかなあ。
RL:“私は神だ”(爆笑)
リーベ:ハイランダー“黙れ”(爆笑)
アルヴィラ:って啖呵切ったけど、こっちからいい案出るわけじゃないんだけどね。
ハイン:「なら、君はどう動く。今すべきこと、聞かせてもらおうか」
アルヴィラ:「今の問題点は、ミリシアが洗脳されていた、という事実だ。向こうがそういう手札を持っている以上、他の――いや、すでに国民全てが洗脳されている可能性だってある。なら、その大本を叩きに行くべきだ」
ハイン:(ふっと笑って)「中々立派な考えをお持ちじゃないですか、姫様」
アルヴィラ:「あ……」感情的にまくし立ててしまったことに気づいて、ちょっと戸惑う。
ハイン:「それに、そんな言葉遣いもできるだなんて」
アルヴィラ:「……だが、俺はまだ半人前だ。それを実行するだけの力はない。肝心なところは、あんたに頼むしかない」
ハイン:「いや、それで十分。……ミリシアの救出、お願いできますか」
アルヴィラ:「あ、ああ。もちろんだ! こっちの自慢は、腕っぷしだけなんでね」
ハイン:「ふ……」
《買収》を使用します。一応《暴露》相当ということで。エグゼクの特技を解禁します。と、同時に。
〈直属部署〉〈社会:企業〉〈ホットライン〉〈社会:ヴィル・ヌーヴ〉で21。窓の外にヴァローナ部隊が現れる。
兵士:「ハイン様、申し訳ありません! 奪われていた機体の回収、ようやく完了しました!」
ハイン:「参りましょうか姫様。国民の混乱も解けてきているようです。我々が奴らを攪乱します。その隙に、ミリシアを頼みますよ。しかし、そうなると姫様の護衛が必要だな……」
一同:ちらり。
リーベ:いやー、ここで出て行っても信用されないでしょう。(一同笑)
アルヴィラ:多少持ち上げられてるから、ここは俺が調子に乗るよ(笑)。「そっちにも十分な戦力があるわけじゃねえんだろ。なぁに、いざとなれば一人でも切り抜けられるさ」
RL:よしまとまったな。そろそろシーンを変えようか。